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はじめに・・・
2005-06-15 Wed 00:09
「ゆい@青空」に来ていただきありがとうございます。


『モノクロレター』 − 完 −

『アカツキ』連載中


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モノクロレター・緑
2005-06-15 Wed 23:24
風の中に葉の匂いが溶け込んでいる。僕はすぅーと顔を上げる。
木漏れ日がまぶしい。
木の葉は太陽の光を浴びて1枚1枚が輝いているように見えた。
桜前線は僕がまだ見たこともない北国へと行ってしまった。
「りお〜〜。配達終わったのか?」
50メートル先で耕一がバイクにまたがっていた。
「おう」
僕は腕時計に目を落とし時刻を見た。
(やばい)
ヘルメットをかぶり、キーを回しバイクのエンジンをかける。
僕のすぐ脇を1台のタクシーがすれ違って行った。

僕の住んでいる町は空と同じぐらい緑がある。山や田んぼ、畑、木々。
そして手の甲の血管のような用水路が町を流れている。
僕はこの町が好きだ。
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モノクロレター・ラブレター
2005-06-17 Fri 12:25
バサッ
大きな台の上に手紙の山。
耕一と手紙の仕分け作業の真っ最中だ。
台の上にばら撒かれた封書を
大きさが揃うように束ねていく。
耕一とは小学校時代、泥遊び、山へ探検、川で魚釣りと毎日2人とも同じように衣服がまっ黒になる付き合いで、中学、高校と同じ学校に通い、大学も科こそは違うものの、結局は同じ大学に通ったなんとも不思議な付き合いをしている。見かけはそこそこのイケメン系になったように思う。まあこいつのハナタレ時代から知っている僕はイケメン系になっても昔を思い出してぷっとなりそうになる。反対に耕一も僕のあらゆることを知っているわけで・・・ばらすなよって感じだ。
「りお、あの場所好きだよな」
今日僕がぼーとしていた場所を言っているのだ。
仕分けの手を止めずに
「まあね、落ち着くんだよね」
「ふ〜ん。俺は女の子に囲まれていると落ち着くけどな」
「・・・あのな〜」
「おまえさ〜今度、呑みに行かね?矢野と一緒に」
僕は言おうとしてた言葉をのみこんだ。
「矢野って窓口の?」
「そうそう」
僕たちより少し先輩で窓口業務をしている矢野加奈子は
てきぱきと仕事をこなしてさすがだなと思っていたが
僕はほとんど仕事の用事や挨拶ぐらいしか会話をしたことが無かった。
「別にいいけど・・・」
「おっしゃ出会いのチャンス!!」
んんっ
「矢野さ、友達を誘ってくるって言ってんだよね」
そういうことか。
トントンと封書をそろえながら
「あれ、彼女いなかったけ」
「別れた。なんつっか合う合わないが判っちゃうんだよね〜この身体」
耕一は自分の両手で抱きしめるポーズをした。
「違いが判る男っつの」
「あっそ」
僕はあきれた声で相槌をうった。

手紙の山は小さい封筒、大きい封筒同士の束になっていく。
山が少なくなりかけた頃、耕一は仕分け作業の手を止め
なにやら手紙の表裏を何度も見てニヤニヤしている。
僕は手紙の仕分けを終えようとしていた
その時、耕一が僕の目の前に1通の手紙をちらつかせた。
「なんだよ」
「これっておまえのことじゃない?」
僕はその手紙をつかもうと腕をのばしたが空気をつかんでいた。
「みどりのとけいをはめているゆうびんきょくのひとへ」
小さい子供の声を真似て耕一が言った。
手首を見下ろした。緑の時計。
大学の入学祝で親父が買ってくれたアディダススポーツウォッチは
緑色の皮ストラップにアナログの文字盤がかっこよくて、とても気に入っている。
僕は耕一から手紙を奪い、改めて手紙を見た。
ごくごく薄い緑色をした封筒にえんぴつで
耕一がさっき言った言葉が書かれていた。
字を覚えたばかりの子なのか・・・字の大きさも筆圧もバラバラだった。
「小さい子からラブレターですよ。りおくん」
「そんなのじゃないだろう」
僕は封筒を半分に折りシャツのポケットに突っ込んだ。
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モノクロレター・謎
2005-06-22 Wed 11:25
透き通るぐらいの青空の下で今日の配達を終えた。
眩しい光が辛い。
昨夜、テレビの野球中継を見ながら
ビールのプルタブを1缶2缶・・・と次々にあけてしまい
いつも呑む量よりオーバーしてしまったのだ。
今日の空とは対照的な僕の身体。

学生生活が終わりかけた頃に自分の弱さを
お酒に逃げてしまった自分がいた。
毎晩お酒を呑み、大学の講義にも出れないことが多々あり
ある日、僕は白い壁で囲われた部屋のベッドに横たわっていた。
目を開けた瞬間、白い空間の中で僕は天に召されたのだと思い
泣けてきた自分に無性に情けなくなった。
気分は最悪で部屋の天井がぐらりと回転しているように見えた。
点滴の液が管にぽたぽたと落ちて、
管を見下ろすと僕の腕と繋がっている。
あの日以来、お酒を呑む量が一気に減り
ビール1缶で酔ってしまう。

僕は軽めに昼ごはんをとり、耕一と仕分け作業に取り掛かった。
ITが発展しメイルや携帯電話が普及するにつれて
手紙の需要はかなり落ちた。
でも台の上にはそれなりに手紙の山が積まれている。
黙々と作業をする僕。
「調子悪いのか?」と
耕一が沈黙を破った。
「いや、昨日ちょっと呑みすぎちゃってさ」
「大丈夫かよ」
「ああ」
耕一はあの一件で僕を怒声で叱責しつつも
かなり心配してくれたのだ。
「じゃ今日は無理?」
「何?」
「出会いのチャンス」
今日、矢野加奈子と呑みに行く約束を今しがたしたばかりだということを知らされた。
「別に・・・昨日の今日だから呑めないけど、それでもいいんだったら・・・」
「おっしゃ」
耕一は大きくガッツポーズをし
これからのことを想像しているように見え、
その姿が可笑しく僕も笑った。

大きい封筒ばかりを集めて束にしていると
耕一が僕の目の前に手紙を差し出した。
僕は素早く受け取り封筒をしげしげと見た。
昨日と同じごくごく薄い緑色の封筒で、やっぱり昨日と同じ字で同じ宛名が書かれていた。
「だれだろう?」
「さあ〜、その辺のガキンチョがおまえにあこがれているんじゃないの」
僕は自分の人差し指で自分を指した。
「ないない、絶対無い。耕一だったらわかるけどさ」
「だろう。何で俺じゃないのか・・・謎」
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モノクロレター・矢野と僕
2005-06-22 Wed 23:15
「ごめん、ごめん。待った?こいつが遅くってさ」
耕一だろ。髪型は変じゃない?とか云々で・・・。
「ごめんなさい」僕は2人に謝った。
焼き鳥が美味い居酒屋のチェーン店で矢野と待ち合わせていた。
店内は平日の夜ということかどうかはわからないが客はまばらだった。焼き鳥メニューが1つ1つ書かれた紙が壁にびっしりと張り巡らされている。カウンター席の目前に焼き鳥を焼く店員が煙をまとい焼いている姿が見える。矢野たちは座敷で掘りごたつ風に足を下ろせる所に2人並んで座っていた。
約束の時間に少し遅れてしまった僕たち。
やっぱり、こういうときは時間厳守が良い印象に繋がっていくのだろうと後で耕一に言っとこう。
「先に適当なもの頼んどいたから」
さすが矢野だと思った。
僕は矢野の前に座り、耕一は矢野の友達の前に座った。
「友達の山嶋範子。同じ高校に通ってた」
矢野に紹介された山嶋は僕たちに一礼した。
「こっちが都築くん」
手のひらを僕の方に向けた。
「で、こっちが宮本くん」
「どうも〜宮本耕一で〜す」
すかさず山嶋の手をとり握手でスキンシップする耕一。
「選挙で廻ってる代議士じゃないんだからさ、やめろよ耕一。山嶋さん、嫌だったらはっきり言ってやった方がいいですよ。」
「えっ、はい」
「はいだってさ。やっぱり嫌だったんだよ」
「えっ、マジ?」
耕一は握手した手を残念そうに見つめていた。
「あっ、いえ全然・・・」
「全然だめ?ショック〜」
耕一が頭を抱えてうな垂れている。
僕たちの周りは笑いで満ちていた。
「かんぱ〜い」
僕と耕一は焼酎を呑み、皮、砂肝、つくね、ももを食べた。
矢野たちはサワーを呑み、おにぎりやサラダ、焼き鳥を数本食べ、最後にデザートの抹茶アイスを食べた。

「じゃ〜ね」「おやすみなさい」
矢野と僕は2人に手を振った。
夜風が心地よく吹き、家に帰り着く頃には
ちょうど酔いもさめそうだ。
国道沿いを2人で歩き出した。国道を走る車の数はこの時間になるとだいぶ減り、車のライトが照らしては消え、暫らくしてまた照らしては消えを繰り返していた。
「楽しかった」
矢野が今夜の呑み会を思い出してそう言った。
「うん。楽しかったです」
僕はオレンジ色の街灯に照らされている地面を見ながらそう答えた。
「都築くんって、宮本くんと一緒だとすごい話すんだね。突っ込みもなかなかだったし」
「人見知りしちゃうんですよ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
国道から道をそれると、光は確実に少なくなり、振り返ると国道はオレンジの光を放つ闇の中に浮かぶ宇宙ステーションみたいに見えた。もちろん僕は宇宙ステーションなるもの見たことはないんだけれど想像上だとそうなのかな。道路の両脇にある田んぼから、かえるが鳴く声が聞こえる。
「あのさ〜、ですとかますとか使わないでよ。そんなに年も離れてるわけじゃないし」
僕より1歩先を歩いている矢野が言った。
「あっ・・・ごめん・・なさい。でもますは言ってないと思うけど」
「今、突っ込んだでしょう」
矢野は僕の方に顔を向け、嬉しそうに微笑んだ。
「ごめん」僕は小さくつぶやいた。
「今度さ、2人きりで会おうよ」
矢野の明るい声が響いた。
小さい声でもこんなに静かだと響いちゃうだろうな。
「・・・・・うん」
「あっ、ここでいい。家、すぐそこだし」
「いや、家まで・・・」
そういいかけた僕をふりきり、矢野は走って行った。
矢野の靴音が響き、どこかの家で飼われている犬が遠くで吼えた。
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